認知症の早期診断が大事とは言われていますが、なぜ大事なのでしょうか。
「認知症って治らないんでしょ」「薬があると言っても進行を遅くするだけでしょう」など、悲観的な内容で、受診しても意味がない、と思う人が多いようです。なかには、認知症と早く診断されても、治療法がないんじゃ、早期診断ではなくて、早期絶望だ、ということも言われています。
では、認知症の早期診断の重要性はどこにあるでしょうか。
理由の一つは、まず、認知症という病気は、複雑で、その正体はよく見ないとわからない、ということです。中には、治る認知症もありますが、重度の認知症状態になると、改善にも限界が出てきます。水頭症、硬膜下血腫、脳炎、ホルモン異常、ビタミン欠乏など、治療可能性のあるものを早期に見つけるということは大事なことです。
理由の2つめは、早期に診断することで、今後の予定が立てられるということです。認知症状態になってしまったら、自分の想いを伝えたり、財産のことを決めたり、また、思い出を作ることなども、難しくなってきます。これは、能力的なところもありますが、制度上の問題もあります。できるだけ、本人の人生らしさを全うするためにどうするべきかは、一番は、自分で考えることが大事です。もちろんご家族と話し合う時間も必要でしょう。早期診断は、そういう時間を確保する意味があります。
理由の3つめですが、これは、専門医受診に関わるところですが、お金の問題です。認知症の患者さんが発生することで、認知症の患者さんにかかるお金と、ご家族が介護に回ることで失われるお金があります。後者を機会損失と言いますが、認知症については、この家族の機会損失のほうがとても大きいと言われています。ある調査では、患者さんの経済損失は、平均171万円、ご家族の機会損失は、平均497万円だったと言われています。大事な点は、認知症専門医受診がされていると、この被害額が5分の1に減っているということがわかりました。認知症の手前の段階から、きちんとした診断、介護の計画などを整えておくと、経済的にも効果があるということです。
他にも、たくさん早期診断の意味はあります。本人だけ、家族だけで悩まず、専門医への相談が大事です。
参考文献
安田朝子 木之下徹「認知症の経済被害と機会損失」CLINICIAN 2009 1125-1129
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