2021年1月17日日曜日

高齢者と接する時の基本姿勢について 認知症に関わる人の心構え

心理的な支援をするというときに、相手がどのような人なのかを掴むことで大まかな軸が決まることがあります。この軸があると、悩むことが少なくなりますので、早く無駄なく、何をすべきかにより集中することができます。今日は、高齢者と対話をするときの話です。

高齢期の発達課題として、発達心理学者のエリクソンは、「統合と絶望」ということを挙げています。高齢期は、今までの人生の総まとめという時期です。長い人生の中で、今までしてきたこと、出会ってきた人、周りへの影響などについて振り返ることが、多くなると言われています。それは、高齢期特有の、退職、老化、病気、社会とのつながりの低下、死別といったイベントを通して、自分の人生と自分の死に直面化せざるを得ない状況となりやすいからです。

「統合と絶望」と難しく書かれていますが、自分の人生を、良い人生だった!と思えるのが、統合。そして、その逆が絶望です。高齢者自身は、統合の達成を目指すこととなり、高齢者を支える側の人たちは、高齢者本人の統合をサポートするということになります。

 高齢者と関わる時の一番大事な姿勢は、この関係性です。支援者の立場として、人生の大先輩としての高齢者の考え方、行動を受容し、肯定するという姿勢が大切になります。高齢者に、認知症があろうとなかろうと、関係のないことです。特に、認知症があるときは、高齢者本人が自分の人生を語れないことがありますから、高齢者と関係のある人たちから、その人の人生について積極的に聞くということも重要になります。目の前の高齢者を、人生の物語の主人公であると捉えることで、意思のある一人のかけがえのない人として扱うことにつながります。

 個別のケースでは、状況に応じてさらに細かい工夫が必要ですが、軸となる基本姿勢を持つと、迷った時に、判断がつきやすくなります。

2021年1月6日水曜日

認知症について 非常に長期で、多様な病気。認知症の捉え方、なにに困り、どう向き合えばよいのか、

 日本は高齢社会真っ只中です。高齢社会の課題はたくさんありますが、認知症はもっとも大きなものです。認知症について、どういうイメージがあるでしょうか。

 高齢者、ボケる、物忘れ、介護、徘徊など、漠然と関連したイメージは浮かぶかもしれないですが、認知症についてきちんと理解することは非常に難しいことです。

 認知症は、高齢になればなるほど、罹りやすい病気です。全経過が7~10年程度の非常に長い病気です。しかも、早期から重度まで、どのステージにあるかで、関わり方や生活の注意点などが、大きく変わってきます。必要なサービスも様々です。認知症を予防したいと思っている人は、生活、食事などの見直しが必要かもしれません。 認知症によく似た、実は治る病気というのもあります。認知症の介護で困っているなら、具体的なサービスを考えなければいけません。家族への影響も大きいです。はじめはちょっとした見守りから、一日中の介護、または、施設入所など、生活への影響、経済的な影響も大きいです。

 長い経過の中で、付き添ってくれる、医療・福祉の人も変わってきます。担当する医者も、かかりつけ医、認知症専門医、精神科医、脳神経内科医、脳外科医、老年科医などなど、多数あります。早期診断が得意な先生、精神症状への対応が得意な先生、認知症の緩和ケアに取り組んでくれる先生、なども様々です。認知症の診断には、診察だけでなく、血液検査、画像検査、など、非常に時間や手間がかかるものもあります。

 さらに、世の中は、コロナ禍で、今まで以上に、認知症、高齢者を支えることが難しくなってます。


 家族に何かが起こっているけれど、どうしたらいいのか。

 認知症と診断されたけれど、どうしたらいいのか。

 認知症という社会課題に対して、どうしていけばいいのか。

 

 認知症といっても、個人ごと、家族ごとに、問題やニーズは様々です。関わる人も様々です。いろんな情報が増えてきていますが、広大な認知症の分野で、一番大事な情報、大事なことは何なのか。

 YUAD(ユアド ユアアドバイザー)は、認知症の人、認知症の人に関わる家族、心や認知症に関連する課題を解決しようとする人々すべてに、専門家の立場から、一緒に考え、支援します。

2021年1月1日金曜日

YUADについて 精神科・認知症の専門医・研究者が、一緒に話し合います。

    心の問題というのは、根源的なことだと思っています。もし環境や身体に、不自由があっても、心のもちようで、幸せを得られることができるだろう。そう思って、常に笑って、おかしく、楽しく生きていこうと思っていました。

 人生は、楽しいことばかりではなくて、むしろ壁や、逆境だらけです。人の話を聞くことが、苦でなかった私は、ただ他人の話を聞くばかりでしたが、聞いているだけなのに、人が変わっていくということに驚きを感じた経験が沢山あります。

 状況が厳しすぎて、落ち込んでしまって、心の病気になって、自分ではどうしようもなくなってしまう人もたくさんいます。心の持ちようで幸せになれるのに、その心自体になにか病気があるのであれば、それは、なんとかしてあげる必要があるのではないか、と思い、精神科医になりました。

    精神科医になって、たしかに環境で、心の病気になる人はたくさん出会いました。話を聞く以上に、薬物療法も行いました。しかし、中には脳の病気で心を苦しんでいる人もたくさんいることを知りました。しかも、心に影響する脳の病気は、わかっていないことだらけでした。認知症は比較的わかっている方ですが、治療法はありません。他にも脳の炎症など、わかっていない病気はたくさんあります。医師として脳の病気を探り、可能であれば、治療することまでしないといけない。そう思いながら、多くの臨床経験と、医学研究を進めてきました。気がつけば、海外に留学をしたり、帰国後は、後輩の博士を指導したりと、どっぷり医学の世界にはまっていました。精神科医は偏ってはならないとは言われており、医学以外の音楽の勉強や、経営の勉強など、バランスを取ることもしてきました。心の問題に向き合うためには、すべての知識が有用でした。

     心の問題への興味から始まって、いろんなことをしてきましたが、思うのは、まだまだたくさんの人と出会って、たくさんの人の心の問題と向き合いたいという気持ちです。

     私は、基本は診療や、研究、教育をしていますが、おかげさまで、いくつかの団体や企業さんが、私の知識や経験が役立つ場面があると言ってくださっています。YUADは、心の問題にかかわるすべての人にとって、お役に立ちたいという想いを形にしたものです。私がしたいことではなく、あなたがしたいことに、全力でお役に立てればと思っています。

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