老年期に発症する認知症の中で一番頻度が多いのが、アルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症患者さんの脳では、アミロイドβ、タウ、といわれるタンパク質が蓄積しています。これらの異常蛋白の影響で、記憶を司る海馬といわれる場所を中心に、神経細胞死が起こってきます。異常タンパク質は、50代ころからだれでも蓄積されるものですが、どうしてたまってくるのか原因はまだよくわかっていません。体質や生活習慣などの複合的な要因が影響すると考えられています。
典型的なアルツハイマー型認知症は、海馬が中心に障害されるので、初期の症状は「物忘れ」です。これは、覚えたことを忘れる、というよりは、新しいことを覚えられない、といった症状でみられます。同じ質問を何度もする記銘力の障害、食事をとったというエピソードまるごと覚えていないというエピソード記憶障害などがみられます。ものをしまった場所を忘れてしまって、誰かにとられたと考えてしまう、「物取られ妄想」は、アルツハイマー型認知症に特徴的です。他にも、日時や場所が答えられない「見当識障害」も出てきます。
アルツハイマー型認知症の患者さんは、前頭葉は比較的後期まで保たれます。質問に対して答えられないときに、言い訳をしたり、ニコニコして話を合わせたり、隣の人に質問をそのまま回してしまうなどの、「取り繕い行動」もみられます。これは、前頭葉の、他人とのコミュニケーションを円滑にしようとする能力が働いているためです。
異常タンパク質は、年単位で徐々に蓄積していきます。アルツハイマー型認知症の初期には、歩いたり手を動かしたりするための運動神経症状は初期は目立たないことが多いですが、脳全体にタンパク質が溜まってくる中等度~重度となってくると、運動神経障害も出現してきます。歩行がふらついて転び易くなる歩行障害や転倒、食事の飲み込みがしにくくなり、やわらかいものでないと、食べられないなどの嚥下障害、誤嚥といった症状が出てきます。この時期には、移動、トイレ、入浴、排泄、食事に介助が必要になってくるので、介護者の負担が徐々に増えていきます。
嚥下障害のため、食事の量が少なくなると、体力低下、免疫力低下がみられるので、感染症にかかりやすくなります。肺炎でなくなる方が多く、残念ながら、病期の経過は、だいたい7~10年程度といわれています。ただ、認知症になったから、寿命が短くなったかどうかについては、大きな影響はないだろうといわれています。
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