高齢になれば、だれでも、物忘れは出てきます。なれていないこと、しばらくぶりの人の名前や顔が思い浮かばないことは、必ずしも異常とは言えません。
一般的に、高齢になると、意欲の低下、感情の起伏、集中力、理解力の低下などがある程度出てくることが普通です。さらに、仕事や役割が少なくなるために、外出の頻度、活動量の低下がみられます。高血圧、脂質異常症といった生活習慣病や、関節痛などの整形外科的な疾患も含めて、いくつかの持病があることも普通に見られます。
高齢者は、新しいことを始める、覚える、というようなことは、難しいところがありますが、長年の経験から活きた知恵を持っているということが多くあります。高齢者の方が、その発する「言葉」に深みがある、というのも、よく経験することですが、長年の人生を背景としてあるから、というのもあります。若い世代への知識、知恵、経験の伝達というのは、大事な役割ですし、高齢者の方が話す場があることや、話を聞こうという機会をもつことは、大事なことです。
高齢期にみられるこのような生理的変化の背景として、脳神経にはどのような変化が起きているのでしょうか。老化した脳は、正常の脳と比べて、びまん性の軽度の脳萎縮がみられ、顕微鏡で詳しく見ると、びまん性老人斑と言われる変化がみられます。これは、アミロイドと言われるタンパク質から構成されている、老化の変化です。老人斑は、アルツハイマー型認知症の脳変化としても、出現してくるものです。高齢者の脳は、萎縮、神経細胞の脱落などを背景として、脳の働きそのものが、(生理的に)若干落ちているということがあります。
アミロイドは、毎日起きているときに脳内に増えて、睡眠の後に、量が減ることが知られています。最近の報告では、脳内のリンパ系といわれる、グリンパティックシステムと言われる機序によって、睡眠中に脳内の掃除が行われている可能性が示唆されています。グリンパティックシステムの詳細や、アミロイドの出現の原因は、まだ詳しくはわかっていませんが、深い睡眠を取ることで、脳を休ませて、老廃物を除去するということができます。睡眠は、脳の老化の予防、認知症の予防にとっても、とても大事なことではないかと考えられています。深い睡眠を取るといっても、闇雲に寝ればいい、ということではありません。睡眠覚醒のリズム、日中の頭や体をつかった活動、食事などが整った上で、適切な量(7.5時間前後)の睡眠を取ることが大事です。睡眠時間は、短すぎても、長すぎても、よくありません。
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