2025年10月31日金曜日

講演報告 「認知症と軽度認知障害を便秘の視点で考察する」


本資料は、認知症と軽度認知障害(MCI)を便秘の視点から考察した講演スライドからの抜粋です。内容は、高齢者や認知症患者における便秘の頻度、要因、およびそれが引き起こす栄養障害やQOL低下といった悪循環に焦点を当てています。さらに、レビー小体型認知症(DLB)の症例を提示し、便秘治療薬エロビキシバットによる食思改善効果を示しています。全体を通して、APOE4遺伝子型、炎症、睡眠障害、腸内細菌叢の変化といった複数の要因が認知症発症リスクと複雑に関連しているという最新の研究知見を統合的に解説しています。

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2025年10月29日水曜日

講演報告 抗Aβ抗体薬の医療連携を考える会 in横浜、「精神科病院でのフォローアップ施設としての役割」

 高齢化に伴う認知症患者の増加と認知症基本法の施行を踏まえ、認知症疾患医療センターが鑑別診断地域連携において果たす機能を紹介しています。特に、精神科単科病院がBPSD(行動・心理症状)への対応力と地域連携ネットワーク構築力を持つことが強調されており、レカネマブなどの疾患修飾薬の導入に伴い、MCI患者への診断、予後説明、生活指導といった精神科医に求められる対応が変化していることを論じています。最終的に、精神科病院が認知症への「対応力」と「連携力」を通じて共生社会の実現に貢献する中心的な役割を果たすと結論付けています。


Notebooklmで作成した解説音声

2025年9月4日木曜日

講演サマリー:「眠りが支える脳の健康 ― 認知症と神経免疫の観点から ―」

 2025年9月2日、旭川で「眠りが支える脳の健康 ― 認知症と神経免疫の観点から ―」と題した講演を行いました。ここではその要点を簡潔に振り返ります。

睡眠と脳の健康

睡眠は単なる休養ではなく、脳の可塑性や老廃物の排出(グリンパティックシステム)を支える重要な営みです。特に深いノンレム睡眠やレム睡眠は、認知機能や記憶固定に密接に関わっており、短時間睡眠や質の低下は認知症発症リスクを高めることが示されています。

認知症と睡眠障害

アルツハイマー病やレビー小体型認知症では、多彩な睡眠異常が出現します。これらは単なる随伴症状ではなく、病態の進行や予兆と関連することが分かってきています。治療の一つとしてオレキシン受容体拮抗薬が注目され、ガイドラインにも記載されるようになりました。

神経免疫と炎症の役割

認知症発症の背景には、脳内外の慢性炎症が関与しています。

  • IL-6Rはある条件下で発症リスクを低下させる可能性があり、

  • MMP-9は血液脳関門の障害やグリンパティック機能低下を介し、神経変性の進行を促すことが示唆されました。

特にApoE4保有者では、炎症促進的な免疫調整不全や睡眠の質の低下が重なり、神経変性リスクが高まる悪循環に陥る可能性があります。

予防への展望

J-MINT prime Kanagawa研究やFitbit解析から、日々の活動量の増加が深い睡眠を改善し、認知症予防に寄与する可能性が見えてきました。Lancet委員会の最新報告でも、認知症の45%は予防可能とされています。今後は、炎症や睡眠障害を標的とした介入が重要になると考えられます。


📝 本講演では、**「睡眠 × 認知症 × 神経免疫」**の観点から、研究成果と臨床実践を交えながら議論しました。YUADとしても、引き続き睡眠の質向上と認知症予防の橋渡し研究を進めていきたいと思います。

2025年8月31日日曜日

「In Love 認知症で安楽死を望む夫とスイスで最後の五日間 」を読んで


認知症臨床に携わる立場から

認知症に関わる臨床を続けるなかで、尊厳死や終末期医療のあり方について考える機会が多くあります。今回、大和書房から出版されている『In Love 認知症で安楽死を望む夫とスイスで最後の五日間』を拝読し、深い衝撃とともに多くの示唆を得ました。

本書は、アルツハイマー型認知症と診断された男性が、症状出現から診断、闘病、そしてスイスでの安楽死(PAS)に至るまでの経過を、妻がまとめた一冊です。


認知症とともに生きる日常の変化

アルツハイマー型認知症を発症することで、日常生活は大きく変わります。

  • 何を負担に感じるのか

  • 何ができて、何ができなくなるのか

  • 家族がどのように関わるようになるのか

本書を通じて、その過程をまるで追体験するように理解できました。患者本人だけでなく、支える家族にとっても、日常の変化は深い意味を持つのだと改めて実感しました。


尊厳死・安楽死をめぐる議論

日本では、癌患者を中心に「尊厳死」「安楽死」をめぐる議論が長い歴史を持ちます。
終末期医療においては、試行錯誤や社会的事件を経ながら、緩和ケアの質を維持・向上させる努力が続いてきました。脳死に関する法的議論、認知症終末期における胃ろう造設をめぐる延命措置の是非なども、未だに議論の対象です。

一方、海外ではPhysician Assisted Suicide(PAS)が合法化されている国もあり、認知症を理由に適応となる事例も出てきています。ADL障害が出ていない段階で安楽死が選択されていることには、大きな驚きを覚えました。


認知症が生む「絶望」と「選択」

認知症は「共生社会をつくる」というスローガンの一方で、当事者には大きな絶望をもたらす現実があります。臨床の現場でも、認知症を悲観して自死を選ぶ方がいるのは事実です。

本書を読むと、PASに至るまでの道のりが決して容易ではないことが伝わってきます。数々の手続き、長い話し合い、そして死の後に残される家族の整理の時間。その重みが、ページを通じて伝わってきました。


現場での実感と限界

認知症の終末期においては、身体的対応には限界があります。だからこそ、精神的に穏やかに過ごせるよう、ケアを工夫していくことが私たちの役割だと考えています。しかし同時に、「PASという選択肢がないからこそ、できる限りのことをしている」という側面も否定できません。


社会としてのこれから

私たちは、このまま現状を良しとするのか。あるいは、

  • 個人の尊厳

  • 医療費・社会保障費などの経済的視点

  • 家族や社会全体の支え方

といった複数の観点から、PASを部分的にでも認める方向に議論が進むのか。

本書を読むことで、海外の事例を「極端」と考えていた自分が、そうとも言えないのではないかと考えさせられました。認知症と安楽死という重いテーマを、私たち一人ひとりが避けずに向き合う必要があるのだと思います。


おわりに

『In Love』は、認知症をめぐる生と死のあり方を、私に強く問いかけてきました。
認知症共生社会を掲げる日本で、このテーマをどう受け止め、どう議論していくのか。安楽死を「認めるか認めないか」だけでなく、その背景にある苦悩や選択をどう支えるか――。

深く考えさせられる一冊でした。

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