2025年、神奈川県薬剤師会の講習会にて、「抗Aβ抗体製剤療法の登場によるMCI・認知症診療の考え方の変化」をテーマに講演を担当しました。ここではその概要をお伝えします。
🔷 1. 認知症と社会の動向
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認知症基本法(2024年施行)に象徴されるように、認知症は医療だけでなく社会全体で取り組むべき課題に。
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介護と仕事の両立支援が全ての企業に求められる時代に入り、薬剤師にも広い視野が必要となっています。
🔷 2. アルツハイマー病の最新知見
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発症の何十年も前からアミロイドβが蓄積し、側頭葉(特に海馬)から前頭葉にかけて進行。
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脳萎縮と認知機能障害がゆっくりと進み、記憶障害や見当識障害、遂行機能障害が目立つようになります。
🔷 3. 治療戦略の転換:疾患修飾薬の登場
✅ 抗Aβ抗体薬(レカネマブ)の特徴
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アミロイドβのプロトフィブリルに対するモノクローナル抗体。
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CDR-SBの悪化を7.5か月遅らせる効果、MMSE低下の抑制などが臨床試験で示されました。
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一方で、ARIA(アミロイド関連画像異常)などの副作用にも注意が必要で、適正使用が前提です。
✅ 薬剤師の関わり方
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適正使用のためには、副作用の早期発見と患者教育がカギ。
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治療を受けない場合の進行スピードや中断時のリスクも含めた説明が求められています。
🔷 4. 予防の重要性と多面的介入
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認知症の40〜45%は予防可能とされ、睡眠・運動・栄養・対人交流の総合介入(例:J-MINT研究)が注目されています。
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中でも薬剤師が果たせる役割は、生活習慣病の管理支援と薬物指導、地域連携の橋渡しです。
🔷 5. 現場からの提言:精神科病院における新たな取り組み
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認知症疾患医療センターでは、抗体薬の相談・紹介先としての役割が拡大。
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当院(横浜舞岡病院)では、図書室を処置室に改築するなど体制を強化中。
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今後は、「抗アミロイドβ抗体薬フォローアップ施設」としての地域連携が求められるでしょう。
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