2021年9月25日土曜日

レビー小体型認知症について どんな病気? レビー小体とは? パーキンソン病との違い 幻視 レム睡眠行動障害 介護が大変 うつ状態 妄想など。

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の次に頻度の多い認知症と言われています。

日本の小阪憲司先生が発見したということで、非常に有名な認知症の一つです。

アルツハイマー型認知症と異なり、脳の中には、レビー小体といわれる構造物が出現します。このレビー小体は、パーキンソン病でみられることがしられていましたが、ある特徴をもった認知症患者の脳にもレビー小体がみられることを小阪先生が発見して、報告しました。

レビー小体型認知症は、記憶障害よりも注意力や視覚認知障害などを呈する認知機能障害の他に、認知機能の動揺性、幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害、といった特徴を中核症状として呈します。アルツハイマーは、記憶障害でしたが、レビー小体型認知症は、非常に症状が多彩です。中核症状の他にも、うつや妄想などの精神症状、嗅覚障害、便秘や起立性低血圧といった自律神経障害などを呈しますし、精神の薬の副作用が非常に強く出るという特徴も持っています。

レム睡眠行動障害は、睡眠中に夢の内容にともなって、体がうごいたり、声をだしたりする、睡眠障害の一種ですが、このレム睡眠行動障害は、認知症に先行して出現するといわれており、早期診断にもつながると考えられています。

他にも、うつ病や不安障害が、認知症に先行したり、手術を受けたときに一過性に混乱を呈するせん妄とよばれる病態を呈したことがあるなども報告されています。

症状が多彩なので、他の認知症よりも介護負担が大きかったり、夜間の行動異常があるため、介護者が疲弊してしまうというのがあります。また、認知症が進むと、パーキンソン病の特徴である運動神経症状がかなり目立ってきますので、身体介護の負担も大きい病気といえます。



参考

認知症診療ガイドラインより


2021年5月21日金曜日

アルツハイマー型認知症について 治療薬 効果 仕組み 副作用 薬以外の方法 生活のおくりかた

残念ながらアルツハイマー型認知症は、現代医学では治療はできません。

しかし、進行抑制のための薬がいくつかあります。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの3剤はいずれもコリンエステラーゼ阻害薬といわれ、アルツハイマー型認知症の脳内で不足しているアセチルコリンを増やす作用があります。これにより集中力、覚醒度が上がります。メマンチンは、アルツハイマー型認知症の脳内で過剰になっているグルタミン酸の作用を阻害するという作用があり、神経保護や脳内のシグナル伝達をスムーズになります。これらの薬は、認知症の進行を止めることはできませんが、進行をゆっくりにする効果があり、精神的に落ち着いたり、日常生活動作を維持するといった作用も報告されています。薬には副作用もあるので、医師の説明をよく聞いて使用してください。薬の飲みすぎや、飲み間違いにより、精神的に不安定になったり、予期せぬ副作用が出ることもあります。

認知症の進行抑制のためには薬も大事ですが、脳を実際に使うことも重要です。自宅にこもらないで、人と会うようにする、適切な生活リズム、食事、睡眠などは、大事な要素です。筋力を維持するための運動、リハビリテーションも大事です。

可能であれば、なにか役割を持つことも重要です。せっかく薬をつかって進行を抑制する以上は、生活自体の質をあげていくことを目指していくこと、そして、たくさんの思い出を作ることが大切です。


2021年5月14日金曜日

アルツハイマー型認知症について 診断の仕方、臨床診断と病理診断 画像診断 アミロイドイメージング 検査は大変?

アルツハイマー型認知症の確定診断のためには、脳の組織を顕微鏡でみて、アミロイド、タウを確認することが必要です。顕微鏡での診断を病理診断と言いますが、なかなかそこまでする方は少ないかと思います。研究機関や、病理を専門とする病院に通院している患者さんで、亡くなったあとに、調べることを希望している場合は、病理まで調べることがあります。

生きている間の診断は、病理診断は難しいので、医者によるいくつかの頭を使うテスト(認知機能の評価)に加えて、頭部CT,MRI検査、脳血流SPECT検査、FDG-PET検査、アミロイドイメージングなどもあり、診察と検査を組み合わせて診断することが一般的です。アミロイドイメージングは、顕微鏡でみるアミロイドを見てはいますが、アミロイドそのものをみているわけではないですし、アルツハイマー型認知症はアミロイドだけが溜まるわけではないので、やはり臨床症状と合わせた解釈が必要です。

臨床診断と病理診断の一致度は、高くても8割程度と言われています。また、病理をみたからといっても、必ずしも診断がつくということではありません。神経の病気の診断というのは、非常に難しく、また、診断がついても、治るとは限らないところが、難しいところです。

しかし、いくつかの検査を組み合わせることで、脳の状態への理解が深まるので、診断が、つかなくても、医師の中には、病態についての仮説を組み上げることができます。そのため、患者さん個別の病状に応じた、対応や、ケアの上でのアドバイスを行うことができます。

また、検査をすることで、医師の間での、情報共有もしやすくなります。

特に早期診断の場合は、検査を組み合わせる必要がありますが、認知症との付き合いは、長いので、客観的な検査を行っておくと、のちのちの医師にとっても診療上有用であり、より最適な診療、ケアの助けとなるでしょう。

2021年4月30日金曜日

アルツハイマー型認知症について 原因 海馬 記憶障害 どうなっていくのか 介護

老年期に発症する認知症の中で一番頻度が多いのが、アルツハイマー型認知症です。

アルツハイマー型認知症患者さんの脳では、アミロイドβ、タウ、といわれるタンパク質が蓄積しています。これらの異常蛋白の影響で、記憶を司る海馬といわれる場所を中心に、神経細胞死が起こってきます。異常タンパク質は、50代ころからだれでも蓄積されるものですが、どうしてたまってくるのか原因はまだよくわかっていません。体質や生活習慣などの複合的な要因が影響すると考えられています。

典型的なアルツハイマー型認知症は、海馬が中心に障害されるので、初期の症状は「物忘れ」です。これは、覚えたことを忘れる、というよりは、新しいことを覚えられない、といった症状でみられます。同じ質問を何度もする記銘力の障害、食事をとったというエピソードまるごと覚えていないというエピソード記憶障害などがみられます。ものをしまった場所を忘れてしまって、誰かにとられたと考えてしまう、「物取られ妄想」は、アルツハイマー型認知症に特徴的です。他にも、日時や場所が答えられない「見当識障害」も出てきます。

アルツハイマー型認知症の患者さんは、前頭葉は比較的後期まで保たれます。質問に対して答えられないときに、言い訳をしたり、ニコニコして話を合わせたり、隣の人に質問をそのまま回してしまうなどの、「取り繕い行動」もみられます。これは、前頭葉の、他人とのコミュニケーションを円滑にしようとする能力が働いているためです。

異常タンパク質は、年単位で徐々に蓄積していきます。アルツハイマー型認知症の初期には、歩いたり手を動かしたりするための運動神経症状は初期は目立たないことが多いですが、脳全体にタンパク質が溜まってくる中等度~重度となってくると、運動神経障害も出現してきます。歩行がふらついて転び易くなる歩行障害や転倒、食事の飲み込みがしにくくなり、やわらかいものでないと、食べられないなどの嚥下障害、誤嚥といった症状が出てきます。この時期には、移動、トイレ、入浴、排泄、食事に介助が必要になってくるので、介護者の負担が徐々に増えていきます。

嚥下障害のため、食事の量が少なくなると、体力低下、免疫力低下がみられるので、感染症にかかりやすくなります。肺炎でなくなる方が多く、残念ながら、病期の経過は、だいたい7~10年程度といわれています。ただ、認知症になったから、寿命が短くなったかどうかについては、大きな影響はないだろうといわれています。

2021年4月6日火曜日

介護保険サービスについて 仕組み 申請 介護度 サービスなど ケアマネージャーさんには何を相談すればよいのか

認知症の診断がつけば、介護保険サービスの申請ができます。

(軽度認知機能障害の場合は、介護保険サービス申請はできますが、ケースバイケースのこともありますが、専門医と相談が良いと思います。その他の病名や状況に合わせて包括的に判断されます。)

介護保険の申請は、市区町村の役所か、地域包括支援センターと言われる施設の窓口にになります。

介護保険の申請を行うと、本人を調査する「認定調査」が行われ、「主治医の意見書」と合わせて認定会議が行われ、状態に応じた介護度が認定されます。

要支援1~2、要介護1~5のいずれかに認定されます。

介護度に応じて、利用できるサービスの上限が変わってきます。また、地域によって利用できる支援サービスが異なります。必要なサービスはケアマネージャーさんと相談して決めていきましょう。

在宅のサービスとしては、デイサービスやリハビリ、ヘルパーさんの導入、自宅の手すりやベッドなどのレンタル、ショートステイなどの利用があります。

入所サービスとしては、グループホーム、特別養護老人ホームなどがあります。

有料老人ホームもありますが、介護保険の利用を組み合わせることもありますので、介護認定はあったほうがよいです。

介護保険は、必要なときにすぐに利用できる制度ではありません。例えば、何らかの病気で入院したけれど、介護保険を申請していなかった、となると、申請から2ヶ月程度時間がかかることがあります。65歳以上で、持病がある、などであれば、主治医と相談して、介護保険の申請を早めに考えてもよいかと思います。


最近は、コロナの影響で、遠隔で介護をしなければならなことも増えてきています。こういう制度があることを早めにしっておいて、気がついたら認知症がすごく進んでいた、ということにならないように、早めに考えていたり、ケアマネさんと普段からコミュニケーションをとっておくことが大事です。

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